色々な国の方々と仕事で関わってみると、日本人の働き方は、他の国の人たちとちょっと違うことに気付きます。
その原因は「仕事観の違い」です。
この記事では、ふたつの仕事観を例にあげて、日本と海外の違いを紹介します。
働くことの意味を考えるきっかけとなるような内容になっています。
仕事イコール悪と考える人々
ユダヤ教やキリスト教的思想では「仕事=懲罰(嫌なこと)」という考えが根底にあります。
なので、できる限り仕事の時間は短くしたい、仕事は楽にしたいという発想が普通です。
特別な使命感で働いている人や、会社経営者とか起業家などはまた別の価値観で働いていると思いますが、ごく一般の会社勤めの人の多くは、このような発想に基づいて働いています。
なので、休みを長く取る(3週間とか1ヶ月とか)、自分の業務外のことはしない、人の仕事を手伝う…なんてことはしない、というのが普通です。
誰かが休みの間、別の人が代わりに担当する…ということも少ないですね。
仕事イコール使命と考える日本人
じゃあ日本ではどうかと言うと、仕事は「使命」です。
そんな大げさな!と思う方は「役割」ぐらいの軽い言葉だと理解しやすいかも知れません。
組織や社会の中で自分が果たす役割という意識で働く人が多いのではないでしょうか。
ひとりひとりが各自の役割を果たすことで、全体として大きな成果が現れます。
「仕事=悪」という考え方は、ここ数十年ほどの間に海外から日本にもたらされたものです。
働きたくない、さぼりたい、できれば仕事はしたくない、こう考える人はどこにでもいますし、エラそうなことを言っている私も、根本はこういうタイプの人間です。
でも、会社や社会の中で自分の役割を見つけたり、外から与えられたりして、自分の仕事が人の役に立っていると思えるようになると、働くこと自体が楽しくなる…というのはよくあることですよね。
社会に大きなインパクトを与えるような仕事とか、人からすごいと言われるような仕事ではなく、ごく一般的な仕事でも、です。
こういう現象は、日本人独特の文化かも知れません。
体を壊すほどの長時間労働を強いられたり、過度な緊張やストレスにさらされる労働環境など、そういう社会問題はもちろん解決しなければいけないです。
でも、だからと言って、働くこと自体を否定する考え方には、どうしても違和感を感じてしまいます。
仕事ができる人とできない人が分断されている世界
ものすごく優秀で仕事ができる人と、その逆の人の差が、世界では大きいです。
そしてそれぞれの人が、同じ職場や同じ立場で働くということは少ないです。
優秀な人は優秀な人がするべき仕事や立場、そうでない人はそうでない人がするべき仕事…というふうに分断されています。
命令する人と従う人。指示する人と指示される人。そんな感じです。
良くも悪くも、その差を当然のものと認めて区別しているのが世界の国々です。
逆に日本では、区別するのは良くないこととして、みんな平等に扱おうとするところに無理があります。
中間層のレベルが高すぎる日本人
世界の色々な国の人と仕事をしていると、日本人の事務処理能力の高さに気付かされます。
特にルールに沿って何かをするとか、質問に対して適切な回答をするとか、言われた通りに修正するとか、そういう基本的な業務に対するアウトプットの平均値は、日本人は高いのです。
こんなことを言ったら怒られるかも知れませんが、日本だと大抵の人ができるレベルの事務処理のようなことが、海外ではできる人が少ないのです。
中間層のレベルが、日本人はとても高いと言えます。
日本でデジタル化、自動化が進まない原因
日本では、社会全体のデジタル化や自動化が諸外国に比べて進まないことが問題になっています。
色々な要因があるとは思いますが、ひとつの大きな要因は間違いなく「仕事観」です。
「働く=尊い」という考え方が根底にあるので、仕事がデジタル化されたり自動化されたりして楽になることに、皆、戸惑いを覚えます。
そしてもうひとつ大きな要因は、ある意味で、日本人の仕事のレベルが高すぎるからだと思っています。
基本的な業務を言われた通りきちんと正確にできる人が多いため、その部分をAIや機械に頼らなくても社会がうまくまわっていくので、わざわざ機械化したり自動化したりしなくても済んでしまうという部分があります。
人が優秀すぎたことが、AIやデジタルの普及の妨げになっているというのは、皮肉なものです。
日本人は日本人と働くのが楽
似たような文化や価値観の中で育った者どおしで働くのは、やっぱり楽です。
文化や価値観という枠組みが、見えないルールとして働くからでしょうか。
もちろん人によって性格も仕事の出来も違うので一概には言えませんが。
海外で育った人や海外で一度でも働いた経験のある人が日本で働くと、とても窮屈に感じると言います。
それはやっぱり、日本独特の仕事観とか働き方に原因があるのでしょうね。
世界の人と働くと価値観が広がる
海外の人と働いたり、仕事上で関わることがあると、自分の価値観を広げることができます。
たくさんの国の人と関わると特にです。
今まで当たり前だと思っていたことが当たり前じゃないとか、普通だと思っていたことが普通じゃなかったとかに気付かされます。
たとえば、英語は別にネイティブみたいな発音で話さなくて全然いいんだとか、世界には普通に数か国語を話す人がたくさんいるとか。
まとめ
世界へ出ると、日本人の良いところ良くないところ、優秀なところそうでもないところ等々が、見えるようになります。
ですが日本にいると、良くないところやダメなところばかりが報道されます。
世界の常識に照らし合わせて日本を評価しているからだと思います。
で、何でもかんでも海外を真似るような方向へ進んでしまうことは残念です。
かと言って、日本の常識や良さを上手に海外にアピールできているかというと、それも疑問です。
日本独自の路線で、そこそこみんなが幸せに生きられる道を模索していけたらなぁ…と思います。